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医療情報
セキュリティ

臨床検査部門

発生した直後に対応したこと


システム障害発生当日は、検査機器自体の稼働は可能でしたので、入院患者の検体については、生化学と血算については全項目測定とし、止血はラベルで検査項目を確認し測定、免疫は中止としました。また、検体検査、生理検査ともに、システムサーバ停止時用に作成していた検査依頼票を用い、緊急検査のみでの対応をおこなっていました!

 

障害期間中に発生した困りごと


  • 長期化への対応

災害時やシステム更新時などシステムサーバ停止時用に準備していた紙媒体での検査依頼票は、停止期間が長くても1週間程度と想定していたため、今回のシステム障害のような長期にわたる使用には適していませんでした。
そこで臨時検査依頼票を急遽作成し、発災翌日には、外来および病棟へ配布し新たな依頼票での運用を開始しました。
そのほかにも、手術の再開時には臨時OPE検査票を作成するなど、各診療業務の再開にあわせ、各種検査票の追加を行いながら長期化に備えました。

 

  • インシデント予防

検査依頼が紙対応になるということは、内容、種類が変化し確認すべき項目が増加することになります。
採血室では、採血までに、患者確認、採血本数、採血管の種類の確認が何度もおこなわれます。また、検査室に到着した検体についても、同様の確認が繰り返されます。
インシデントの回避のため、検査機器への入力については、手入力を極力少なくするため、血算はバーコードを作成、止血はセットを組み、セットごとのラック運用としました。
検査結果については、一患者で結果用紙が5枚以上になる場合もあり、その確認作業が大変でした。再検は済んでいるか、依頼項目は全てそろっているのか、患者間違いは無いか、返却すべき診療科・病棟に間違いは無いかなど、何度も確認し、各フローを確実にすることに尽力しました。その結果が、インシデント防止に繋がったと考えています。

 

  • 人員確保

システム障害中は、確認作業の多さから、検査報告や輸血製剤の払い出しにかかる時間は、平時とは比べものになりませんでした。
検査部門としては、とにかく検体検査・輸血検査を最優先するために、人手のかかる検鏡検査は中止しました。生理検査においては、必要最小限の検査とし、生理検査部門から検体検査部門へスタッフを配置転換することにより、結果報告時間をかなり短縮することができました。

 

    • 外注検査

    外注検査の項目は多岐にわたり、専用の採血管も多く確認作業に時間がかかります。システム障害期間中に外注検査を再開するとなると、汎用用紙を使用しなければなりませんでした。
    そこで外注検査委託業者と相談の上、当センターの依頼上位項目を記載した外注検査用の臨時検査票を作成しました。これには検査項目の他に、採取量、採取容器、注意事項などを記載しています。
    それ以外で汎用用紙から依頼する項目については、必要量、容器、注意事項を記載したリストを作成し、外来・病棟へ配布しました。

     

    • 輸血検査

    輸血検査においても、血液型確定の有無やスクリーニング結果確認がスムーズにできないため、一つの血液製剤を払い出すのにかかる時間は、通常の何倍にもなりました。
    このような状況下であるからこそ、輸血インシデントは絶対に起こさないよう、対策を講じました。急な出血に対応するための手術用輸血オーダのルール策定にあたっては、麻酔科をはじめとした各科医師の協力のもと、安全を最優先することで運用を決定しました。
    そのほかにも、製剤管理用にマクロファイルを作成したことで、輸血の安全性の向上につながったと考えています。

     

     

     

    復旧対応


    システム復旧に向けた病院方針においては、PCのクリーンインストール実施が第一選択でしたが、実際問題として検査機器のPCに対しては実施不可能でした。そこで、情報企画室の指示下で、各機器のPCに対し2種類以上のウイルスチェックを実施し、問題が無いことを確認したうえで復旧することになりました。
    検査室では、機器の種類や台数も多かったので、チェック計画を立案し、その進捗を管理しながら現状の把握および復旧につとめていきました。
    それでもなかなか作業が進まない装置もあったので、情報企画室や検査機器ベンダーと相談しながら対応にあたりました。

     

    周知


    検査科から院内職員への検査運用の周知については、診療情報システム端末とは別の事務系システム内グループウェアにある掲示板や、災害用BCPのため導入していた職員個人のスマートフォンに対し情報を一斉配信できるツールなどを使用し、検査室の運用方法などを全職員に随時配信していました。
    また、検査室内での情報共有については、初日よりホワイトボードを活用していました。
    主査以上の会議は毎日行い、そこで決定した内容をホワイトボードに記載し、情報共有を行いました。また、それらの内容を検査室内各部門で報告する際にも、各部門にあるホワイトボードを活用していました。

     

     

    反省点とBCP策定のポイント


    長期間のシステム障害を振り返った時の反省点としては、判断が遅かったことが挙げられます。
    システム障害直後に、検査科業務における優先順位付けができておらず、生理検査スタッフを検体検査業務へ配置転換することが遅くなってしまいました。検体検査業務への人員重点の判断をもっと早くに行なえていたら、検体検査スタッフへの負担を少なくできたのではないかと考えています。システム障害時のBCP策定に当たっては、予め検査業務の優先順位付けを行っておくことが必要だと感じました。
    また、検査機器のセキュリティーに関しても、ベンダー任せになっていたことも反省点の一つです。今後は、機器選定時にもセキュリティーを検討事項に含める必要性を感じました。

     

     

    まとめ


    60名以上の常勤臨床検査技師、総勢100名以上の体制で運用される検査部門において、大規模システム障害の際に検査業務を維持するために、一番重要であったことは「情報共有」であったと考えます。情報があるからこそ、スタッフ自ら考え、行動することができ、また、業務運営上の問題点が明らかになることにより、解決するための指示・解決が速やかに行えたと思います。
    ただこれは、2000名以上の職員を抱える病院全体としては、情報共有を有効に行うことはなかなか難しい課題でもあります。病院としての決定方針を、いかに速やかに、かつ確実に全職員に周知していくかについては、今後の課題でもあると考えています。

     

     

     

     

    対応PDF

     

     システム障害中の部門別対応状況一覧