がんゲノム医療
がん遺伝子パネル検査について
当センターは厚生労働省から、がんゲノム医療連携病院として指定され、大阪大学医学部付属病院と連携して、2019年12月から「がん遺伝子パネル検査」を行っています。2020年9月から、当センターに通院をされていない、がん患者さんの「がん遺伝子パネル検査」を受け付けています。
がん遺伝子パネル検査は、次世代シークエンサー(NGS)を用いて、生検や手術などで採取されたがん組織や血液を用いて、対象とされる遺伝子を網羅的に解析し、遺伝子変異を包括的に解釈し、治療方針を決定する検査です。そのため、がん遺伝子パネル検査によって解析された結果を、複数の専門家で構成されるエキスパートパネルで検討されます。当センターは、大阪大学医学部附属病院がんゲノム医療センターが主催するエキスパートパネルに参加し、診断や治療の検討を行っています。
○ がんゲノム医療に関する当センターの特長についてはコチラをご覧下さい。
○ 患者のみなさまはコチラをご覧下さい。
がん遺伝子パネル検査の種類
当センターでは、『OncoGuide™NCCオンコパネルシステム(シスメックス社)』『FoundationOne®CDxがんゲノムプロファイル(中外製薬社)』『FoundationOne®LiquidCDxがんゲノムプロファイル(中外製薬社)』『Guardant360®CDx(ガーダントヘルスジャパン株式会社)』『GenMineTOP(コニカミノルタREALM)』を実施しています。各検査の特徴は以下の通りです。
- OncoGuide™ NCCオンコパネル(保険診療)
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がん関連114 遺伝子を搭載し、114 遺伝子の塩基置換・挿入/欠失変異と遺伝子増幅、12 遺伝子の遺伝子融合および腫瘍遺伝子変異量 (tumor mutation burden;TMB) が検査可能です。腫瘍組織由来DNA だけでなく、正常コントロールとして非腫瘍細胞(末梢血)由来DNA を用いることで、まれな遺伝子多型も含め除外でき、体細胞遺伝子変化と生殖細胞系列遺伝子変化も区別できます。
- FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル(保険診療)
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324遺伝子を搭載し、309遺伝子の塩基置換・挿入/欠失変異と遺伝子増幅、36遺伝子の遺伝子融合、マイクロサテライト不安定性 (microsatellite instability;MSI) および腫瘍遺伝子変異量(tumor mutation burden;TMB) 測定ができます。がんゲノムプロファイリング検査機能に加えてコンパニオン診断薬として機能も持っています。
- FoundationOne® Liquid CDxがんゲノムプロファイル(保険診療)
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血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA: circulating tumor DNA)を用いることで、324のがん関連遺伝子を解析します。がんゲノムプロファイリング機能と併せて、複数の分子標的治療のコンパニオン診断機能も持っています。ただし、血液検体による検査では、次のいずれかの要件が必要です。1)適切な保存検体がない、かつ、新たに検体採取ができないなどにより、腫瘍組織検体を⽤いたがん遺伝⼦パネル検査が困難であること。2)腫瘍組織検体を⽤いたがん遺伝⼦パネル検査を⾏ったが、包括的なゲノムプロファイルの 結果が得られなかった。
- Guardant360®CDx(保険診療)
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腫瘍が血液中に放出する遺伝物質の断片である血中循環腫瘍 DNA (ctDNA) を次世代シークエンサーによって解析します。固形がん患者さんの血液中に流れ出たがん細胞のctDNAから遺伝子異常を検出し、がんに関連する74の遺伝子を網羅的に調べると同時に、国内で承認された複数のがん治療薬に対するコンパニオン診断機能を併せ持っています。
- GenMineTOP(保険診療)
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がんの診断や治療に関連する737遺伝子を解析対象にし、塩基置換、挿入/欠失及びコピー数異常を次世代シーケンサーを用いた解析により検出します。腫瘍組織検体から抽出したDNAとRNA、そして、非腫瘍細胞(血液)を同時に解析することで、多種多様な遺伝子変異情報を提供できます。
【保険適応の対象】
- 標準治療がない固形がん患者
- 局所進行もしくは転移が認められ標準治療が終了となった固形がん患者(終了が見込まれる者を含む)
がん遺伝子パネル検査によって、がん細胞の遺伝子変異が明らかになりますが、有効な情報が得られない可能性もあります。また、数パーセントの患者さんに、遺伝性腫瘍の遺伝子変異が明らかになると言われていますが、その際には、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが患者さん、ご家族、血縁者の方に対応する体制を整えています。
費用について
健康保険が適用される場合、検査費用は2回に分けて合計56,000点(3割負担168,000円)です。
検査の結果が有効なものであるかにかかわらず発生します。
(内訳)
検査依頼時・がんゲノムプロファイリング検査:44,000点(3割負担132,000円)
検査結果説明時・がんゲノムプロファイリング評価提供料:12,000点(3割負担36,000円)
検査の詳細については、国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT)のページもご参照ください。
当センターの「がん遺伝子パネル検査」の流れ
- 予約
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かかりつけ医療機関の先生方に、当センターの受診予約を依頼していただきます。※後述
当センターの地域医療連携センターは、予約票をFAXで返送いたします。
- 当センター受診:検査の説明
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外来主治医と遺伝診療センターが検査について説明します。
受け取った病理標本を病理科で確認します。
結果説明のための受診予約をとります。
検査依頼時の費用をお支払いいただきます。
- 検査提出
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結果が出るまで平均して2ヶ月を要します。
- エキスパートパネル
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専門家による解析結果の検討が行われます。当センターの主治医も出席します。
- 当センター受診:検査結果説明
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外来主治医より結果を説明します。
検査結果説明時の費用をお支払いいただきます。
紹介元の医療機関あてに診療情報提供書にて結果を報告いたします。
- 検査終了後の追跡調査
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がん遺伝子パネル検査は追跡調査を実施しています。紹介元の医療機関に経過報告書を送付しますので、ご記入のうえ返送ください。ご協力をお願い致します。
予約方法
かかりつけの医療機関は、診療情報提供書と本ページ下部にある様式1:依頼書をダウンロードして記入し、当センターの地域医療連携センターにFAXまたは郵送してください。
地域医療連携センターから、予約票をFAXで返送いたします。
※患者さんからの直接の予約は受け付けておりません。
病理標本の提供について
当センターで「がん遺伝子パネル検査」を実施するにあたり、過去に貴院で採取された病理組織標本を病理科に提出していただく必要があります。
がん遺伝子パネル検査は、適切な病理組織ブロックから作製された未染プレパラートを使って実施することが重要とされています。プレパラート中の腫瘍の量のみならず腫瘍細胞の割合が大事で、腫瘍範囲が小さい場合は数十枚の未染プレパラートを用意しなくてはなりません。また、検査過程で後日検査会社からプレパラートの追加提出を要求される場合もあります。加えてプレパラート作製時には厳格なコンタミネーション対策が必須と言われています。
患者様の時間的な制約もあるかと思いますので、現症に関わるブロックおよび診断時に作製されたプレパラートを提出していただければ、当センター病理科において再度評価し、検査に最適な未染プレパラートを当方で作製いたします。
つきましては、病理検体チェックリスト、現症に関わる病理組織標本(生検、手術、転移巣等のブロックと診断時に作製されたプレパラート)および病理診断報告書をできる限り全て提出してください。お借りしたブロックと染色済みプレパラートは遺伝子パネル検査結果説明後に責任を持ってお返しいたします(このため返却まで2ヶ月以上かかります)。
他方、病理標本が後述の条件を満たす場合、検体不良で検査が出来ない可能性が高くなると言われています。ご留意ください。
【検体不良から検査出来ない可能性が高いとされる条件】
- 脱灰した標本(特に脱灰作業に酸を利用した場合)
- 検体採取からホルマリン固定までに長時間要した標本
- 中性緩衝ホルマリン以外で固定された標本
- ホルマリン固定時間が長かった(72時間を超える)標本
- 3年以上前の標本
- 過去に受けた放射線治療の照射範囲に含まれていた組織の標本
ブロックの提出が困難な場合、すべての標本が検体不良条件を満たす場合、その他ご不明な点がありましたら、下記にご連絡ください。
大阪急性期・総合医療センター 病理科
TEL 06-6692-1201(代表)
患者さんが初回受診時に持参する資料・試料について
患者さんにご持参いただく資料は下記のとおりです。
- 診療情報提供書
- 様式1:依頼書(がん遺伝子パネル検査用)
※血液検体によるによる遺伝子パネル検査では、以下の書類や組織検体、プレパラートは必要ありません。
- 病理検体チェックリスト(ホームページからダウンロード)
- 病理診断報告書のコピー
- 手術検体・生検検体のブロック
- 診断時に作製されたプレパラート(HE、免疫染色)
※現症に関わる標本(生検、手術、転移巣等)は出来るだけ全て準備してください。
こちらから、必要な書類をダウンロードしてください。
(1)様式1:依頼書(がん遺伝子パネル検査用) xlsx
様式1:依頼書(がん遺伝子パネル検査用) PDF
※血液検体による遺伝子パネル検査(リキッドバイオプシー)では、診療依頼兼診療情報提供書の項目「検体について特記時項」に、必ず、以下の1)または2)をご記入ください。
1)適切な保存検体がない、かつ、新たに検体採取ができないなどにより、腫瘍組織検体を⽤いたがん遺伝⼦パネル検査が困難である。
2)腫瘍組織検体を⽤いたがん遺伝⼦パネル検査を⾏ったが、包括的なゲノムプロファイルの結果が得られなかった。
(2)病理検体チェックリスト xls
病理検体チェックリスト PDF
※血液検体による遺伝子パネル検査では不要です。
「がん遺伝子パネル検査」に関するお問い合わせ
大阪急性期・総合医療センター
遺伝診療センター
電話番号:06-6692-1201(代表)