パーキンソン病治療センター
センター長 隅蔵 大幸(脳神経内科副部長)
特色
パーキンソン病に対する治療の主体は内服治療です。しかし、パーキンソン病の症状は極めて多岐にわたり、ふるえや動きにくさの運動症状、便秘や抑うつなどの非運動症状、注意散漫や記憶障害などの認知機能低下症状が組み合わさって生活の質を低下させることがあります。病態としても個人差が強く、進行するにつれてアルツハイマー病などの他の神経変性疾患ならびに脳血管障害を併存することがあり、病態の把握が分かりにくく、進行する具合が個々によって大きく異なることも特徴です。また薬剤の副作用も同様に多岐にわたります。そのため最善の治療を行うためには丁寧な診察と豊富な経験を必要とします。当センターでは、年間約500名のパーキンソン病患者様の治療実績があり、最善の治療の提供を行っています。
当センターでは脳神経内科、脳神経外科、リハビリテーション科の3科でチーム医療を行っています。パーキンソン病は病気の期間が長くなると、人によっては通常の内服治療だけではなく、リハビリテーション、外科的処置を要する治療(脳深部刺激療法(DBS)、胃瘻を造設ならびに腹部皮下からの持続的薬剤注入療法)が必要になる場合がありますが、当センターではいずれの治療も対応いたしております。かつて、DBSなどの外科的処置を要する治療は、複数の薬剤を一通り試されてもなお生活の質が担保できない難治例に限って導入されてきましたが、近年ではあらゆる薬剤を試されるまで待つのではなく、まだ社会的に自立している状態において早めに導入することを推奨する考え方もあります。近年、当センターにおいても運動合併症と呼ばれる運動症状の日内変動が出現した後に、まだ日常生活が比較的保たれている状態において早めにDBS手術を導入することでその後の生活が楽になりよい状態がより長く維持されている患者様を経験しております。当センターではDBSなどの外科的治療の適切なタイミングを逸しないよう注意深く観察しつつ診療をさせて頂いております。DBSに関しては、術後も長期にわたって刺激および投薬の両面において連携しながら調整することが大事ですが、当センターでは可能な限り脳神経内科医と脳神経外科医が極めて綿密な連携を持ちながら調整しております。
脳神経内科では豊富な臨床経験をもとに、治験薬の臨床試験(治験)も積極的に行っております。
脳神経機能外科では毎月定期的に患者様向けにDBSを含めた外科治療に関する無料相談会を開催しており、八尾市や浪速区など府下近隣の病院様より患者様をご紹介いただき、DBSを含めた外科治療に関する様々なご相談をさせて頂いております。また、脳神経内科も適宜診察を追加させて頂くことで、このような相談会を契機に他院様でパーキンソン病と指摘されていたものの、実は他の類似する疾患であったと診断が再考されることもあります。
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主要疾患
パーキンソン病、進行性核上性麻痺、アルツハイマー病など神経変性疾患
主要な検査ならびに治療
神経学的診察、脳高次機能検査、脳及び脊髄MRI、MRA、DaTスキャン、MIBG心筋シンチ、脳血流SPECT、脳血管撮影、3D-CTA、電気生理検査(脳 波、筋電図、誘発筋電図)、筋生検、頚動脈超音波検査、入院での日内変動の観察およびレボドパ反応性評価試験など。
内服治療、脳深部刺激術、リハビリテーション、胃瘻ならびに腹壁皮膚からの持続的薬剤注入療法
診療実績
2023年度の深部脳刺激術(DBS手術)は6件実施。
(2022年は8件。2021年度は7件。2020年度は8件)
学会認定
日本神経学会専門医教育施設
日本脳神経外科学会専門医認定制度指定訓練施設
診療科からのお知らせ
脳神経内科では毎日初診患者さんの診療を行っています。脳神経外科は火曜日午後に機能的脳神経外科外来を開き、パーキンソン病の外科治療などを行っています。
学会・論文報告
日常の通常診療から得られた新しい知見や重要と考えらえる臨床情報について、今後の診療の向上ならびに医療の発展につなげていくことを目的として、個人情報に最善の配慮をしつつ、学会、医学雑誌などで発表させて頂くことがございます。
・A case of SBMA presenting with myasthenic syndrome limited to a dropped head.
Hiroyuki Sumikura, Naoki Hatayama, Tomohiro Fujioka, Nozomi Nagashima, Yuki Shimada, Isao Fukasaka, Manabu Sakaguchi
Neurology and Clinical Neuroscience. 12 June 2024. DOI:10.1111/ncn3.12831
・A good therapeutic response to evocalcet for dropped head due to primary hyperparathyroidism: A case report. Hiroyuki Sumikura, Hiromitsu Miyakawa, Takahiro Tomoda, Takuma Sato, Mai Ito, Yuki Shimada, Yoshiyasu Ueda, Manabu Sakaguchi
Neurology and Clinical Neuroscience. 11 June 2024 DOI:10.1111/ncn3.12837