2022.7
ドクターコラム
「脳卒中」は待ったら負け
「脳卒中」は待ったら負け
脳卒中や心臓病など循環器系の疾患(血管の病気)は、突然症状がでることが多い病気です。とくに脳の血管が詰まったり、破れたりする脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)は、症状が出現したときには、一刻を争って脳卒中を専門に扱っている脳卒中センターがある病院を受診しないといけない病気です。脳へ流れる血管が詰まって起こる脳梗塞は、時間が経つと脳の神経細胞が気絶している状態からすぐに死んでしまって、その機能が戻らなくなりますが、速やかに治療を開始し血流を回復できれば元の状態に戻れる場合があります。待ったら負けです。
どんな症状が脳卒中?
それでは、どんな症状が出現したとき脳卒中を疑えばいいでしょう。FASTという脳卒中の症状とすぐ受診を促す標語があります。「脳卒中?顔(Face)、腕(Arm)、言葉(Speech)で、すぐ受診(Time)」の頭文字をとっています。
F:顔は、いーと言ってもらって片側の口角の動きが悪い。
A:腕は、両方の手のひらを上に向けて同じ高さに挙げてもらうと片方だけ下がる。
S:言葉は、「今日は天気がよい」と言ってもらった時に、呂律がまわっていない、言葉が出ない。
T:これらの症状がひとつでも突然に起こったら、脳卒中を発症している可能性があるので、すぐに症状が改善したとしても、救急車を呼んで“一刻も早く”脳卒中専門病院で診てもらうこと、時間が短いことが大事だ、ということを表しています。
引用:岡田靖 総監修 脳血管救命センター物語 メディカルレビュー社 2003
これらに加えて、両眼が同じ方向を向いている(共同偏視)場合は、脳に流れる太い血管が詰まっている可能性があり、とくに脳卒中センターでの緊急治療の必要性が高い症状と言えます。その他にも、急にバットで殴られたような激しい頭痛を感じた場合は、くも膜下出血を起こしている可能性がありますので、すぐに救急車で受診することが重要です。

脳卒中センターではどんな治療が受けられる?
脳の血管が急につまった脳梗塞の場合、その詰まった血管の部位をすぐにCTなどの検査で見分けて、カテーテルでその血管を通す治療ができる場合があります。脳の血管が破れる脳出血やくも膜下出血では、出血した血の固まりを取り除く手術や血管が破れたところにある動脈瘤を血管のなかからコイルで詰めたり、開頭してクリップで挟んだりする手術があります。これらの緊急治療が24時間365日できる病院が脳卒中センターを持っている病院です。救急隊は、近くの搬送できる脳卒中センターを知っていますので、迷わず119番することが緊急治療を”一刻も早く”受けるために重要です。大阪急性期・総合医療センターは、府内の脳卒中センターの中でも中心的役割を担うコア施設に認定されています。
脳神経内科 主任部長 坂口 学