ページ内を移動するためのリンクです。
現在表示しているページの位置です。
やすらぎ通信

2022.10

ドクターコラム
「前立腺がん検診」を受けよう

前立腺がん検診を受けよう!~PSAの測定を~

前立腺がんは男性のがん部位別の統計でもっとも罹患数が多く、2018年には年間92,021人が罹患されました。2020年の死亡数は12,759人であり、男性で6番目でした。生涯で男性が前立腺がんに罹患するのは10.8%、およそ9人に1人がかかる計算になります。以前は少なかった前立腺がんですが、最近の増加傾向は予想を上回っています。排尿困難などの下部尿路症状を生じるのは前立腺肥大や過活動膀胱のことが多くこれらの疾患を合併していなければ、前立腺がんの初期にはあまり症状が出ることがありませんので、検診が重要です。

PSAって?

PSAは「前立腺特異抗原、prostate specific antigen」の略語で、前立腺の上皮細胞から分泌されるタンパクです。多くは精液中に分泌されますが、ごく微量が血液中に取り込まれます。検診におけるPSAカットオフ値は、全年齢で 4.0 ng/mL が推奨されています。この値を超えるとPSAが高いということになります。PSAが高い場合に考えられる疾患は①前立腺癌、②前立腺肥大症、③前立腺炎、などがあります。また、射精や長時間の車の運転のような前立腺への機械的な刺激でも軽度上昇する場合があるのでPSAが高くても必ず前立腺がんがあるというわけではありません。またPSAは加齢とともに上昇するため、若年者での早期発見を目指して、年齢別カットオフ値(50〜64歳:3.0 ng/mL,65〜69 歳:3.5 ng/mL,70歳以上:4.0 ng/mL)を用いることも推奨されています。年齢階層別カットオフ値によって若年者における前立腺癌診断の感度を改善して、適切な治療選択により前立腺癌死亡率が低下することが期待されます。一方で、カットオフ値を引き下げることで不要な生検数増加、過剰診断や過剰治療の増加等も懸念されます。

男性型脱毛症や前立腺肥大症の薬を服用している人の注意点


男性型脱毛症は、思春期以降の男性に生じる前頭部や頭頂部の薄毛です。治療薬として国内ではフィナステリド(プロペシア ®錠)とデュタステリド(ザガーロ ®カプセル)が市販されています。これらは血清 PSA 値を低下させます。前立腺肥大症の薬のうち、デュタステリド、酢酸クロルマジノン、アリルエストレノールも血清PSA値を低下させます。これらの薬を内服している方は血清 PSA 値の判定にあたっては基準値以内の値でも注意が必要です。
精密検査は
PSAが高い場合には、泌尿器科への受診が必要になります。PSA再検、直腸診、超音波やMRIでの画像検査などの精密検査が行われます。これらの検査を総合的に判断して前立腺がんが疑われる場合には、前立腺針生検が勧められます。当院では、1泊2日の検査入院で行っています。麻酔を行ったあと超音波で観察しながら、細い針で前立腺の組織を採取(生検)します。検査後に尿に血がまじったり、熱がでたりすることがまれにありますが、比較的安全な検査です。生検の結果、前立腺がんが確認されれば、様々な治療選択肢の中から治療を行っていくことになります。


大阪市の前立腺がん検診


令和3年7月から、大阪市でも前立腺がん検診がはじまりました。早期発見・早期治療により市民の生活の質(QOL)の維持向上、健康寿命の延伸につなげることを目的としています。50・55・60・65・70歳の男性(年度末時点)が対象です。くわしくは大阪市のホームページをご覧ください。


泌尿器科主任部長兼前立腺がん治療センター長 高尾徹也

イベント・講座

イベント・講座を見る

栄養管理室レシピ