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やすらぎ通信

2023.4

ドクターコラム
「貧血」のおはなし

貧血のおはなし

みなさんは血液の病気と聞いて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?ニュースやドラマを観ていると、白血病などの病名を挙げられるかもしれません。しかし身近な血液の病気として思いつくのは、貧血ではないでしょうか?


貧血とはその名の通り、血が足りなくなる病態です。ここでいう「血」とは、血液成分の中の「赤血球」を意味します。赤血球の働きは、肺から取り込まれた酸素と結合し、血流の流れにそって、体のいろいろな部分へ酸素を送り届けることです。そのため、赤血球が減ってしまうと、体に酸素が届かなくなり、「息が切れる」「体がしんどい」など、呼吸が苦しいような症状が出現します。
赤血球は、ケガをして出血したりすると失われます。目に見える部分での出血はすぐに気がつきますが、胃、大腸など消化管からのゆっくりとした出血などは気がつかないことも多く、検診などで初めて貧血を指摘される方も多いです。

赤血球を作るのに必要な栄養

赤血球を作るのに必要な栄養
よく「貧血」というと、「鉄分をとりましょう」と言われます。これは正解で、赤血球の産生には鉄分が不可欠です。しかしあまり一般には知られていませんが、他にビタミンB12も重要です(図1)。鉄分が不足すると、赤血球の数が減少し、かつ赤血球の大きさが小さくなります(小球性貧血:図2)。一方、ビタミンB12が不足すると、同じように赤血球数が減少しますが、赤血球の大きさは大きくなります(大球性貧血:図3)。


 


胃切除後のビタミンB12不足は、定期的な注射によるビタミンB12の補充


ビタミンB12は、動物のレバーや、しじみ・あさりなど魚類に多く含まれています。ただし普通の食事をしている人で、ビタミンB12が不足することはほとんどありません。菜食主義の方など、動物性食品を摂られない方はビタミンB12が不足する可能性はあります。
もう一つの原因としては、胃の切除が挙げられます。口から食 べた食物からビタミンB12を吸収するために、胃は大きな役割を果たしています。過去に胃潰瘍や胃がんの治療のため、胃を全摘出された患者さんは、その後ビタミンB12を消化管からうまく吸収できない状態となっています。体内のビタミンB12の蓄積量は多いので、胃の摘出術を受けてすぐにビタミンB12が不足することはありません。しかし胃切除後数年~10数年経ってから、貧血が進行してきた場合は、ビタミンB12の不足を疑わなくではいけません。


胃切除を受けた方でも、部分切除であり一部でも胃が残っている場合は、ビタミンB12が不足する恐れは低くなります。しかし胃を全摘出している方は、ビタミンB12の注射による補充を定期的に行う必要があります(およそ2~3ヶ月に一度の皮下注射)。もし過去に胃の全摘術を受けておられて、ビタミンB12の補充を受けておられないようでしたら、一度かかりつけ医に相談されることをお勧めします。



(血液・腫瘍内科 主任部長 石河純)

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