2024.01
ドクターコラム
「病理診断」をご存知ですか?
病気の診断を確定する「病理科」
私たちの体は膨大な数(およそ60兆個)の細胞からできており、それぞれが大切な役割をもっています。その様々な種類の細胞が集まった集団のことを組織といいます。さらにこれらの組織が複数集まって脳や心臓、肺などの器官(臓器)をつくっています。
「病理診断」とは、患者さんの体から採取された細胞や組織の標本を作製し、その標本を医師が顕微鏡で観察して診断を行うことです。これによってがんなどの病気の診断が確定します。これを実施するのが病理科であり、ここでは標本作製を臨 床検査技師が担当し、病理診断はそれを専門とする病理医が行っています。
病理診断の種類としては、細胞診断と組織診断の2つがあります。例として、乳がんの病理診断がどのように行われているのかを紹介します。問診や視触診、画像検査(マンモグラフィーや超音波検査など)で乳がんの疑いがある場合には、その病変部にがん細胞がないかを調べる必要があります。患者と直接接して診察や治療を行う臨床医がそこから細胞や組織を採取し、採取された細胞や組織が病理科に提出されます。正確な病理診断を行うには臨床医と病理医との連携が欠かせません。
「細胞診断」と「組織診断」
■細胞診断
細胞診断は、細胞1つ1つを顕微鏡で観察し、その細胞が良性細胞かがん細胞かの判別を行います。
乳房の細胞診断では、病変部の細胞を注射針で吸引し採取する方法や、乳頭からの分泌物を採取する方法などがあります。採取された細胞を標本に塗り広げ、観察が可能なように処理を行います。写真は細胞診断用の染色(パパニコロウ染色)で細胞に色を付けたものです。また、細胞診断では細胞検査士資格を有した臨床検査技師が業務を担当します。標本作製だけでなく、標本中のたくさんの細胞の中からがん細胞などの異常な細胞を探し出します。そのため細胞の微妙な違いを見分ける観察眼が必要です。見つけた異常な細胞は病理医により細胞診断が行われます。

■組織診断
組織診断には、病変部の一部から針を使って組織を採取する「生検」と呼ばれる方法、病変部を含む組織や臓器そのものを外科的手術により採取する方法などがあります。これらで採取された組織は、顕微鏡で観察が可能なように処理され標本がつくられます。
下の写真は組織診断用のヘマトキシリン・エオジン(H・E)染色を行ったものです。細胞の核が紫色に染まります。病理医はこのような標本を観察し診断を行います。これによってがんの診断が確定します。
また、手術中に採取された組織の「術中迅速組織診断」も行われます。これは、通常では結果報告に一週間程度を要しますが、15分程度で迅速に報告を行う方法です。短時間で標本作製を行うため詳細な観察が難しい場合もありますが、手術方法の決定に大きく寄与します。こうした診断の結果が、臨床医から患者さんに伝えられます。「病理診断」は、治療をどのように行うかの決定に重要な役割を果たしています。
病理科では、普段直接患者さんと接する機会はありませんが、適切な治療のために正確な診断が行えるよう日々精度向上に努めています。
病理科 臨床検査技師(細胞検査士) 西尾祥邦

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